Science of Soft Robots – ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合

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周期的に色が変わるゲルを体内時計を有する疑似的な細胞に見立て、体内時計が温度変化に対して一定のリズムを保つ新しいメカニズムを提案

東京工業大学 国際先駆研究機構 リビングシステムズ材料学研究拠点の山田雄平特任助教と工学院 機械系の前田真吾教授(A03班)、九州大学大学院 芸術工学研究院 未来共生デザイン部門の伊藤浩史准教授(A03班)らの研究チームは、化学反応を利用した疑似的な体内時計を考え、そのモデル化および理論解析を通じて、生物学の大きな問題の1つである体内時計の温度補償性を説明する新しいメカニズムを提案した。

多くの生物が共通して約24時間周期のリズムを持っている(体内時計)ことが知られているが、周囲の温度が変化しても体内時計のリズムが乱れないメカニズム(温度補償性)は明確にはわかっていない。これまでの研究では、特殊な反応機構により温度補償性が保たれていると考えられていたが、本研究では細胞の体積変化が内部の化学反応に影響を及ぼしているのではないかと考えた。実際に、周期的に色が変わるゲルを体内時計を有する疑似的な細胞に見立て、温度変化・体積変化および色変化周期の関係を調べた。その結果、温度による色変化周期の変動を、体積変化による化学反応制御によって抑えることができることが示された。分子などの物質の変化ではなく、力学的な変化によって体内時計の温度補償性が保たれているというアイデアは一般的ではなかった。このような「メカニズムが身体に埋め込まれている」というソフトロボット学の考え方は、生物学ではあまり一般的ではなかったが、体内時計の温度補償性はもちろん、他の多くの未解決問題を解く鍵になるのではないかと期待できる。

本研究成果は2022年12月27日付の「Scientific Reports」にオンライン掲載された。

プレスリリース
東京工業大学
九州大学

論文情報
掲載誌 : Scientific Reports
論文タイトル : Artificial temperature-compensated biological clock using temperature-sensitive Belousov-Zhabotinsky gels
著者 : Yuhei Yamada, Hiroshi Ito, Shingo Maeda
DOI : 10.1038/s41598-022-27014-z