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Scientific Reports誌に掲載:ミミズの筋肉シートを用いたバルブの開発

本領域の田中陽(B01班 理研)の研究グループが、ミミズの筋肉組織を用いて、電気刺激によらない、化学エネルギーのみで動作する小型の弁(バルブ)を開発しました。

研究チームは、ミミズの筋肉を用いたバルブを試作するため、土台となるマイクロ流体チップ上に幅・深さ0.2mmの流路と直径3mmの液室(チャンバー)を作製しました。そして、そのチャンバーの上に筋肉の収縮力を伝えるプッシュバーを置き、さらにミミズ筋肉シートを載せて固定しました。これを用いて、電気刺激を用いた場合と神経伝達物質アセチルコリンによる化学刺激を用いた場合において、バルブとしての性能を比較しました。その結果、電気パルス刺激では、シートが素早く収縮しバルブは閉じましたが、収縮を持続するには繰り返し電気刺激を与える必要がありました。一方、アセチルコリン刺激では、応答は緩やかながら、1回の刺激だけで1分以上持続的に止めることができたことから、このサイズのバルブとしては圧電素子を用いた既存のものに匹敵する機能を持っていることを確認できました。また、刺激後にミミズの筋肉部分を緩衝液で洗浄し、再刺激するサイクルを繰り返すことで、繰り返し使えることを実証しました。本研究成果は、電力が供給されにくい体内に埋め込むタイプの機械を制御するための装置などへの応用が期待できます。

本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』(7月8日号:日本時間7月8日)に掲載されました。

論文名:A valve powered by earthworm muscle with both electrical and 100% chemical control
論文リンク:https://doi.org/10.1038/s41598-019-44116-3

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