Science of Soft Robots – ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合

B02-01:生殖補助医療におけるソフトロボティクスの展開

概要

研究代表者 池内 真志(東京大学)

近年、生殖補助医療における体外受精の利用者が急増している。しかし、体外受精後の胚を子宮内に戻し、妊娠に至る率は3割程度に留まり、患者とその家族にとっては、心身及び経済面で大きな負担となっている。さらに、体外受精では、子宮外妊娠等の重大事象の発生率が、自然妊娠と比べて高いことも問題である。

一方、研究代表者は、構成要素のサイズよりも極めて薄く柔軟なポリマー膜によって作製される、「膜マイクロデバイス」の概念を提唱し、開発を進めてきた。膜マイクロデバイスは、従来のデバイスに比べ、高い物質透過性や熱伝達性と、柔軟性を有することが特徴で、特にバイオ・医用分野で有用である。

本研究では、代表者が培ってきた膜マイクロデバイス技術を応用し、体外受精後の胚という微小な対象物を、柔軟で傷つきやすい子宮内膜に安全に移植し、妊娠率の向上とリスク低減を目指す。具体的には水圧駆動方式の経腟的搬送カテーテルと、子宮内で自動的に胚を放出する機構を備えたシート型デバイスからなる胚移植システムを開発し、その原理を実証する。