Science of Soft Robots – ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合

B01-01:有機半導体単層2分子膜を用いた分子認識センサ機能の開拓

概要

研究代表者 荒井 俊人(東京大学)

細胞膜をはじめとするソフトな機能性分子薄膜は、分子が自己組織的に並ぶ性質を利用することで低コスト・省資源での電子デバイス製造を可能にする基本的な構成要素として期待されている。中でも単層の2分子膜は、生体膜との構造類似性から、これまで硬い無機材料で実現が困難とされてきた生物特有の嗅覚や味覚の認識を代替する分子センサに利用可能と考えられている。しかし、脂質2重膜をはじめとする多くの単層2分子膜は液中でのみ安定で、デバイス化が著しく困難であることが大きな課題となっていた。そこで、我々は電子機能を担うパイ電子骨格の片側のみをアルキル基で置換した有機半導体分子を用いることで、大気安定な大面積単層2分子膜を構築する技術を最近開発した(図参照)。得られた半導体薄膜は厚みわずか5ナノメートル程の極薄膜であり、その分子レベルの厚みに基づく究極の柔らかさが期待できる。さらに、この極薄膜をもとに作製した薄膜トランジスタは良好なキャリア輸送特性を示すことを確認している。そこで、本研究課題ではこの生体膜に類似した構造を持つ究極のソフト材料を活かすことで周囲の分子を認識するセンサ機能の開拓に従事する。とくに、薄膜トランジスタ型の素子を用いることで、周囲の極性分子ガスを検出できるガスセンサの開発を進める。これらに加え、フレキシブル基板上に金属配線や半導体層を構築した電子部材を領域内に提供していくことで、各研究班と積極的に協働する。