B02-02:ソフトロボットが使用者の自己身体感覚を損ねない設計・制御の許容範囲と脳科学的解釈
概要
研究代表者 | 葭田 貴子(東京工業大学) |
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ソフトアクチュエータを人の外骨格ないし内骨格型パワースーツとして使用し、健常者の身体機能拡張としてのパワーサポートや、身体制御過程に困難がある患者のロボットリハビリテーションに使用する際に、着用者にとってそのロボットが自己身体の一部となり(自己身体所有感,Ownership)、自分自身がそれを制御しているのであって、ロボットに受動的に身体を動かされているのではない(制御主体感Sense of Agency)という感覚を計測・可視化する方法論を確立する。これにより、パワースーツ着用時の人の身体制御に関わる脳内機構を解明する。
ここでは特に、ソフトアクチュエータがMRI(magnetic resonance imaging) のような高磁場利用の医療用脳・身体機能イメージング機器に写り込まず、かつ通常のアクチュエータと異なり高磁場でも問題なく稼働する性質を利用し、一般的な心理物理学的測定方法に加えて、外骨格型ロボットを着用したままのヒトの脳機能をfMRI(functional magnetic resonance imaging) 直接計測・可視化し、さらにそれをロボットの制御パラメータにフィードバックするシステムのプロトタイプ、もしくはそのモジュールの一部制作を実施する。このような実験装置の製作と、ヒトとMRI装置双方への安全評価を実施しつつ、並行して、ロボットの動作の時間遅れが我々の心身に与える違和感や、ヒトの様々な錯覚を利用したその軽減方法、長期間のアクチュエータ使用が我々の心身を変化させていく脳の可塑性等について等、ユーザの使用感を中心に多角的に検証する。これら一連の研究を通じて、ソフトアクチュエータ利用の外骨格型パワーサポートスーツを設計する際、どの程度不正確な制御によっても違和感なくユーザ自身の身体感覚と一体化しうるか、その具体的な物理量を特定する。同時に、基礎研究の側面としては、ヒトの身体が、脳の意識的な情報処理機構への情報処理負荷を最小限に抑えつつ、意識的過程とそれ以外の情報処理過程の巧みな分散協調動作によって我々の日々の身体動作を達成している、その仕組みの解明に寄与する。