Science of Soft Robots – ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合

ニュース

シビレエイを用いた海底探査法の実証

本領域の田中陽(B01班 理研)の研究グループが、シビレエイを用いて、底棲生物であるシビレエイの自律的な動きを利用し、海底地形図の作成が可能であることを実証しました。

魚類などの食糧利用をはじめ、海底油田など鉱物資源の利用、さらには海洋を海上交通や輸送のインフラとして利用するなど、海洋の利用を促進していくには、海中の情報をより高い精度でより早く把握する必要があり、その第一歩として全世界における高分解能の海底地形図の作成が重要です。海底地形のマッピングには、音響ビームや光学探査あるいは自律型海中ロボットなど、物理的な装置機械類を用いるものがほとんどです。むろん、これらは海底探査の主軸となる手法ですが、研究チームは、これら従来の計測機械を用いた海底探査とは全く異なる、底棲性で電源としても使えるシビレエイを生物エージェントとして用いた方法を提唱し、その手法の妥当性を検証しました。

まず、大型水槽でシビレエイの撮影動画から動きをプロットし、シビレエイがほとんどの時間、底付近を動いていることを確認しました。次に、シビレエイに小型音響送信機のピンガーを装着して海底に放ち、その位置を追跡することにより、海底の地形情報が得られることを実証しました。これは、底棲生物を用いた海底地形マッピングの可能性を示した初めての例です。

既存の潜水ロボットなどによる音響ビームを用いた海底探査法と全く異なり、生物のエネルギーや知能を利用してロボット的な自律的仕事を行うという点で、ソフトロボット学分野の成果としてきわめて重要なものです。

本研究は、Springer Nature発行のオンライン科学雑誌『SN Applied Sciences』(12月9日号:日本時間12月9日)に掲載されました。

論文名:Movement tracing and analysis of benthic sting ray (Dasyatis akajei) and electric ray (Narke japonica) toward seabed exploration
論文リンク:https://doi.org/10.1007/s42452-020-03967-6